年間第12主日C
ルカ9・18-24
仙台市には一つのカトリック病院があります(司教館の近くに)。光が丘スペルマン病院と言います。光が丘というのは世の光であるキリストにちなんだものです。スペルマンは枢機卿の名前でスペルマン枢機卿の寄付で立てられたからです。今は一般病院になっていますが、もともとは結核専門病院で、戦後結核(けっかく)を患う人々は多かったので、建てられたわけです。
何十年前の話ですが、この病院で洗礼を受けた若い女性がいます(高田徳明、『きょう呼びかける神』、オリエンス、1989年参照)。彼女は、中学三年生の秋に発病して、もう八年近くも、結核と戦って洗礼を受けたわけです。彼女は、それから13年、病気になってから21年近くも、病院生活をし、いちども退院することなく、35歳で亡くなりました。
キリスト信者になってから亡くなるまでの13年間の、彼女の信仰生活は、すばらしいものだったそうです。キリスト者として新しい生き方を続けたのです。
毎日、自分の与えられた十字架の苦しみを背負って、イエス様に従ったのです。「自分を捨てた」新しい生き方をしたのです。『雪のかがやき』という小さな本があります。病気に苦しみながらも、多くの人々をなぐさめ、励まし、力づけた彼女の手紙を集めた本です。
その中に、高校に入って間もなく発病し、いちじ回復して退院したあと、再発した一人の女子高校生に書いた便りがあります。そこには、自分をすてて、苦しむ人を励ます、新しい生き方の模範を見るような気がします。
「今、あなたは微笑(ほほえ)んでいますか。苦しみの最高頂(さいこうちょう)にいる澄子(すみこ)ちゃんに、こんなことを書いてごめんなさい。でも、この言葉はわたしの大好きな言葉です。どんな苦痛の中にあっても微笑みを忘れない自分でありたい、といつも思っております。なかなか実行できませんけど…。よく頑張ったわね。今日やっと笑顔がもどられたそうですね。安心いたしました。毎日毎日、澄子ちゃんの痛みが早く、一秒でも早く回復しますように、と祈っております。今こうしている間にも、どんなに苦しんでいるのかと思うと、祈り足りないような気がして、ごめんなさい。でも、この苦しみの中で、イエス様が十字架につけられたときの苦しみをイエス様とともに背負うことができて、あなたはだれより早く、天国へ宝を積み込みましたね。怠け者のわたしには、今のあなたがとてもうらやましく思われます。
お母様によく甘えてください。痛みに負けずに食べてくださいね。歯をくいしばって頑張ってくださいね。そのうちお伺いいたします。
最後に、何よりのニュース。澄子ちゃんのあこがれの先生は、K先生と同級生だそうです(26歳)。痛み、少し飛んで行ったでしょう。それではまたね。頑張るのよ。 雪子より
雪子さんは、このとき、もうすでに15年間も病の床(とこ)にありながら、自分のことよりも、まだ若い澄子ちゃんの病気がよくなるように、熱心に祈っていました。
自分のために祈ることは、何も悪いことではありません。けれども、自分のためだけに祈るのでは、利己的かもしれません。自分のためよりも、まず苦しんでいる人のために祈ること、それが、自分を捨てた祈りなのです。「日々、自分の十字架を背負って」イエス様に従っている姿も、この手紙から読み取ることができます。
私たちにとって、自分に与えられた十字架 ―― 体が弱い・仕事はうまくいかない・スタイルが悪い・家が貧しい・家族はばらばらになった・いじめられる・馬鹿にされる などなど-―は、それはどんなことであっても苦しいのです。
どんな苦しみの中にあっても、神様を信頼して、微笑みを忘れない生き方が、自分の十字架を背負ってイエス様に従う生き方なのです。
雪子さんの結核は、そのころの医学では、もうほとんど回復の見込みがないほど重いものでした。けれども、けっして希望を失いませんでした。神様のお望みであれば、いつか回復して、退院し、たった一日だけでも、みんなと同じように、人にために奉仕したいと願っていました。この手紙の中でも、秋田県に住んでいた澄子さんをお見舞いするため、「そのうちお伺いいたします」と望みを述べています。どんなに希望がない状態にあっても、神様に、しっかりとした希望を持って生きることは、すばらしいことです。
私たちも、自分の苦しみから救われる日を希望しながら生きていかねばなりません。
雪子さんの手紙の最後には、ちょっぴりユーモアがただよっています。苦痛の中にいる澄子ちゃんが、痛みを少しでも忘れられることができるならば、と思って、ユーモアで励ましているのです。
自分の苦しみを忘れて、痛みに苦しむ友のために祈り、微笑み、希望、ユーモア、励ましを与えること。これが、今日の福音にあった「自分を捨て、日々、自分の十字架を背負って」イエス様に従うキリストの弟子としての生き方なのです。
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